ソフトウェアを納入したのに代金を支払わない、とある会社の話

これは大学時代のお話。
一応、不本意ながら現在進行形である話でもあるので、具体的な名前は伏せたいと思う。

一部業界では割と有名な、とあるカルチャースクールのような会社であるA社。このA社に勤める知り合い(Bさん)を通じて、A社の顧客管理システム(以下、「Tシステム」)の開発を請け負うことになった。かくして僕一人のTシステム開発プロジェクトは幕を開けたのである。

最初に仕事を貰ったのは、大学1年の頃。受注から約1年かけて完成したTシステムには、約束通り正当な対価が支払われた。まぁ厳密に言えば、5万円相当ほどは約束よりも少なかったのだが、それぐらいのことで文句は言わない。このときまでは良かったのである。

それから約1年後、先方の業務体系に変更が生じたために、現行のTシステムが業務に合わなくなったという話を聞いた。その時点で先方は基幹系システムの更改と併せて一般のIT企業に次期顧客管理システムの開発を依頼する予定であったようだ。ところが、次期顧客管理システムの開発については、なんと再び僕に依頼がやってきたのである。そして、次期Tシステム開発プロジェクトが始まる。確か当時は大学3年生、就活が始まる少し前のことだった。

ここから話がおかしくなりはじめる。
最初は免責条項、守秘義務条項などを含めた正式な契約書を作成するはずだった。しかし急に先方が「必要無い」と言い始めたのである。この時点でおかしいと思うべきであったが、前回の案件でも正式な契約書は交わしていなかったし、先方がそこそこ有名な企業であることもあって、こちらは完全に信用していたのである。(まあ学生なんかにシステム開発を任せる時点でどうかしてると思うが)

そしてSkypeチャットでの口頭の約束として、作成したプログラムに関して起きたいかなる損害についても責任を負わないこと(免責)、僕は2011年3月までに次期Tシステムを納入し、それに対してA社は代金またはそれに準じる現物支給(最大50万円相当、具体額は明記せず)を支払うことを条件とし、商談がまとまった。ただし、残念ながら、このときのログは残っていない。

1人だけの開発プロジェクトのため、A社のBさんやその他社員などに要求仕様を作成してもらい、順次必要な機能を開発・実装し、実際のデータを用いて随時、総合テストを行って貰う方向で、設計とテストの工数を極限まで減らした。これは旧Tシステムの際も似た開発手法で行い、ある程度の実績があったからだ。問題が発生すれば1日のうちに対応出来るよう努力した。

こうして、就職活動の終わった8月の終盤には、殆どの機能を完成し、簡単な仕様書を作成、仮納品を終えた。
ただ、その時点で保留状態であった要求仕様がいくつか残っていたため、その後も少しずつ機能追加などを行っていったが、就職が近づいたこともあり、2011年2月の時点で開発が終了した。

「4月以降は他のIT企業に引き継いで欲しい」と先方に伝え、代金の支払いを要求した。
しかし、である。

3月11日、東日本大震災が発生。

それが原因で経営が危うくなったのだろうか。それとも単なる言い訳なのだろうか。
支払いできない状況に陥ったとA社が伝えてきたので、僕はやむを得ない事情と判断し、半年程度の支払い延期に同意した。

そして、5ヶ月後の8月。
Bさんに支払いを迫る。ところが、Bさん曰く、上司が逃げ回っていて決裁が下りないというのだ。それが事実なら会社としてどうなのだろうか。

最終的には、(最初の時点で言っていたはずなのだが)「今後プログラム修正は一切行わない」「仕様書は渡すから他の業者を見つけてくれ」「以前にも伝えたが、このプログラムGPLライセンスである(MySQLのライブラリを使っているため)」「一刻も早く代金を支払うこと」という点をBさんに伝えた。そして、もしA社が支払わないなら、Bさんが個人的にある程度立て替えてくれるということになった。

その後、Bさんから聞いた話であるが、僕の伝えた内容を聞いたA社の新任のシステム担当者が「大人なんだから一度引き受けた仕事はちゃんと最後までしてもらわないと」とか言っていたらしい。こちらとしては「大人なんだからちゃんと代金を支払いましょう」と言いたい気分だ。しかも、「法的手段も厭わない」などと意味の分からないことを言っていたとも聞いた。まったくもって図々しい話である。そもそも、この仕事は3月までに終わっているのだ。

ちなみに、請求金額は、普通のIT企業に依頼する場合に比べれば非常に安い。
人月単価90万円というボッタクリが普通の中で、時給1000円以下の単価で実時間での請求だ。月額にして4万円程度。
合計すると、それなりの金額になるが、それでも正社員2人を1ヶ月雇った人件費よりは安いことだろう。
それに、顧客管理システムにより2,3人ぐらい顧客が増えれば簡単にペイできる程度の金額である。非常識なボッタクリをしているわけではない。むしろバーゲンセールだ。
なによりも、当初見積額として呈示した価格よりも、低めの請求額としている。こちらは譲歩しているのである。
高いなら高いと言えばいいのだ。一括が無理なら、分割にすれば良いのだ。こちらもさらに交渉に応じる用意がある。
それにもかかわらず、支払いもせず、図々しい発言だけ飛び出すというのはもはや正気の沙汰ではない。

会社に嫌気がさしたというBさんは、A社から距離を置くことになったという。もともとBさんはA社にいることが本業ではないため、それでもやっていけるのだ。

そして、僕はA社とのパイプを失った。
今現在もA社から代金は支払われていない。

人を教える仕事をしながら、その裏ではシステム開発に対して正当な報酬を支払わない。
そんな会社が実在するのだ。具体的な会社名は言わないけれど、皆さんには注意していただきたいと思う。

まあ、実際には内容証明郵便で督促状を送付し、最悪の場合、裁判所に訴えるという方法もあるのかもしれない。
だが状況はこちらに不利に見える。まず、口約束であるから正式な契約書が残っていないこと。それに、納入したシステムに不具合が残っているかもしれない。「免責条項」は存在しなかったと主張された場合、圧倒的にこちらが弱い。証拠がないのである。ちなみに、GPLライセンスには免責条項があるが、実際にはシュリンプラップ契約と同じく無効と考えられるのが定説である。

そして、裁判するとなると会社を休まなければならない。弁護士も雇わなければならない。
裁判まで行かなくとも、面倒な手続きが一杯である。
はっきり言って、そんな時間やお金ははないのである。

それに今更代金を支払って貰ったところで、就職してしまった今となっては確定申告がめんどくさいことになり、就業規則的にも微妙なところなのだ。この件に関して言えば、A社に請求するよりも、代金立て替えの意志があるBさんに立て替えを要求するぐらいが現実的な落としどころか。

まあ、就職活動のネタにできたし、今の会社に入ることもできたし、Tシステム開発で培ったノウハウは今の仕事に生かせている。それに、今の僕なら2ヶ月で稼げる金額なのだから、目くじらを立てるほどのことでもないのかもしれない。

しかし、なんというか、腹が立つ……。

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